メンバー4人によるオフィシャルインタビュー公開!
What’s HAPPY BIRTH DIE feat. Chiaki Harada
シングルでありブックレット作品『HAPPY BIRTH DIE feat. 原田ちあき』は、スサシにとって何なのか?
雑誌が付属する音源作品。今までもそんなリリースはたくさんあるし、別に珍しいものじゃないでしょ? と思っているアナタ、早合点して勘違いするんじゃあない。シングルでありブックレット作品『HAPPY BIRTH DIE feat. 原田ちあき』。これは、単なるシングル解説本でもなければ、バンドの写真集でもない。スサシの過去を網羅したアーカイブブックですらない。
「HAPPY BIRTH DIE」という楽曲を起点に、そこからアイディアを発展させた新たな作品が、このブックレットだ。そして、このブックレットで描かれた世界軸がMVでは映像として表現されている。1つの楽曲を軸に3つの表現方法で表しており、作品全体をひっくるめて『HAPPY BIRTH DIE feat. 原田ちあき』と名付けている。
ただ、そういうこともブックレットの表紙画像だけからは伝わりにくいだろう。この作品に関して、メンバーはどういう気持ちで制作に挑んでいたのか。また、完成したものに対してどう思っているのか。HAPPY BIRTH DIE feat. 原田ちあき』とはスサシにとって何なのかを話してもらう。
楽曲とブックレット、MVが三位一体となった作品
ーニューシングル『HAPPY BIRTH DIE feat. 原田ちあき』は52ページのBOOK仕様でリリースされるのだとか?
ユーキ:はい。あの52ページに込められたヤバさを、このインタビューで言葉で伝えるにはどうしたらいいんだろうって悩んでます。あのすごさが、そのまんま伝わってたら絶対に手にしたくなると思う。そんな内容です。
チヨ:読み物としての面白さを担保しつつ、アートブックとしての要素も大きいブックレットになりましたね、結果として。当初は、おふざけ4割・真面目6割くらいの割合で内容を作り込んでいけたらって考えてたんですけど、この内容までよく持っていけたなって。ほんまに関わってくれた制作陣のお陰やな、ありがとうございますって感じです。
ユーキ:いや、ほんま(笑)。昨日『HAPPY BIRTH DIE feat. 原田ちあき』のMVがあがってきたんですけど、それを観て、全部の収まりが超よくなったんですよ。楽曲、ブックレット、MVが三位一体となってガチッと1つの作品としてまとまっている。それだけ世界観が固まっていると、しっかりと作品のムードを生み出すことができるっていう、この感じ。なかなか味わったことがなかったですね。本当に全部が互いをうまく活かし合っているし、パッケージとしてバランスよい形に完成されていると思います。そこにめっちゃ興奮してるっすね。
タクマ:(どの曲に関しても)本来こうであるべき形だなって。
ユーキ:ほんまにそうやねん。
タクマ:今回の『HAPPY BIRTH DIE feat. 原田ちあき』は、楽曲に始まり、ブックレットからMVまで、しっかりと1つの世界観で作り込むことができたんで、すごい満足感がありますけど、これを基準に考えたら、だんだんムカついてくるぐらい(笑)。(過去に発表した他楽曲は)作ってもすぐに消費されちゃってきたから。
ユーキ:オレら味しめたら毎回やるで。
チヨ:次は何しよう?ってハードルをあげる作品にもなったと思う。このブックレットは、ヴィレヴァン(ヴィレッジヴァンガード)や本屋に並べてあっても、表紙のインパクトやデザインで手にしたくなると思うんですよ。スサシのことを知らない人も気になるハズ。
タクマ:ブックレットの内容に関しては、もはや自分たちが作ったとは言えないクオリティっすね。自分で読んでいて普通に楽しめるっていう。
チヨ:このブックレットの制作期間は、ちょうど「HAPPY BIRTH DIE TOUR」を回っている段階で、完全に時間的な余裕がない状態だったんですけど、アートディレクションを担当したMargtやイラストを描いてくれた原田ちあきさんが、自分たちの意見を汲んでまとめあげてくれて。タクマが言うように、オレも作った感じしないですもん。出来上がったレイアウトを見て「うわ、すご!」って。
ーそもそもシングルをBOOK仕様でリリースすることに決めたのには、どういう理由があるんですか?
チヨ:「HAPPY BIRTH DIE TOUR」がスタートする前に何かシングルを出そうって話になったんです。昨年はコロナ禍で「スサ死 e.p.」とシングル「STEAL!!」をリリースして、ライブやツアーは何もできない状態だったんで、そこでまた新曲を1曲だけリリースするのは、ちょっと面白みに欠けると感じていたんですよね。ライブもないのに、どれだけ自分たちのことを伝えられるんだろうって。じゃあ、既存のパッケージじゃなくて、自分たちも面白いと思える出し方をしようってメンバーとも話し合ったんです。
ーでも、通常パッケージではないリリースは、流通のことなどを考えるとビジネス的にハードルが高くないですか?
チヨ:そうですね。ただ、こういう通常と異なる扱いにくい形でリリースしたときに「スサシ、おもろいやん」って乗っかってくれるショップがあれば、僕らもそこに愛を感じるし大事にしたいと思えるし。お客さんも、そういう作品の方が楽しんでくれると思ったんですよね。そこから"スサシ・オリジナルの雑誌"というアイディアが生まれたんです。
ー当初はどんな雑誌を作ろうと考えていたんですか?
チヨ:最初は、スサシのことをどうしたら楽しむことができるのかっていうことを表現する、”スサシのHOW TO本”みたいな雑誌を頭に描いていたんですよ。このシングルで初めてスサシを知る人も、すでに僕らのことを知っている人も、どちらにもより深くスサシの世界を知れるような内容をコンセプトとして考えていました。
ーそれがブックレットの制作を進めるうちに変わっていった?
チヨ:そうです。Margtや編集担当のスタッフと、みんなで中身についてのアイディアを出し合って考えていたら、面白い企画がどんどん出てきて、それをアート的な側面からうまく打ち出そうという方向に進んでいって。当初、オレらが考えていたものとは違うものになったんですけど、結果的に自分たちの想像の上をいったものになったという印象です。良い意味で、他バンドと差別化できたリリースになるんじゃないかと。ほんまにこんなに面白い感じになるとは……。なんか人ごとみたいな言い方ですけど(笑)。
消費されて流されるのではなく、長い時間残っていく物
ー今回のブックレットはどこか2000年代に出版されていたファッション誌やカルチャーブックのようなレトロな風合いを感じますが、みなさんは中高生の頃、どんな雑誌を読まれていたんですか?
ユーキ:オレは実家が美容室なんすよ。お客さん用に定期購読で買っていた雑誌があったんで、そういうのはめっちゃ読んでましたね。中高生の頃は『Ollie Magazine』とかストリート誌もよく読んでましたよ。
タクマ:『GiGS』とかっすかね。機材が載っているんで。どのアーティストが何を使っているのかっていうのがわかりやすいですし、バックナンバーも今読むと面白いですね。あの人、こんなの使ってるんだなって。
チヨ:そこでいくと『Go!Go! GUITAR』とか。アーティストが楽器を持ってドヤ顔で決めたカットがカバーに使われるじゃないですか。あの文化、めっちゃ好きです(笑)。あとは『TUNE』や『FRUiTS』とか、ああいうスナップ雑誌はおもろくて読んでました。
ユーキ:スナップ誌はおもろかったな。サイバーパンクなヤツとか、すごい格好してるヤツがいきなり載ってたり。スナップの文化も、今はSNSにとって変わられたのか、本で残っていないのが残念。当時のバックナンバーを、今見てもおもろいもんな。
チヨ:当時は雑誌ごとに、それ系のヤツが街ごとに集まるようなシーンが出来ていましたよね。あの感じが今はないのかも。
タクマ:SNSが浸透してからジャンルに限らず雑誌自体が減ってきているし、どうしてもネットじゃ残らず流れていっちゃうからシーンになりずらいっていうのはあるよね。
チヨ:そうそう。
ーイチローさんが読んでいた雑誌は?
イチロー:『Boon』ですかねぇ。横乗り系なんで。先日もサーフィンに行ってきたばかりですよ。
ーさすがっす。
チヨ:ちょっとベタな言い方になるかもしれないですけど、スサシとして、ちゃんと世に残るものを作りたかったっていうのもBOOK仕様でリリースする理由の1つではありますね。ただ消費されて流されてしまう一過性のものでなく、数年後に読んでも今の時代がわかるものっていうのは、やっぱりいいじゃないですか。コロナ禍に行ったツアーのことも記録しているし、きっと数年後に見たら印象も変わってくると思うんです。スサシを取り巻く時代感が1冊の中に落とし込まれているので。
タクマ:それに、Margtや、ちあきちゃんが描いてくれたイラストやアートワークをちゃんと残る形にできたのはすごく嬉しいですね。CDジャケットのアートワークも、物として手に取れますけど、音楽と一緒で、すぐに消費されて流されていっちゃうじゃないですか。それが嫌で。スサシに関わっている人が注いでくれた時間や才能が、少しでも報われるような感じが、このブックレットにはある気がするんです。
ー確かに雑誌や本などは、時代感を考えるとCDより後世に残っていきやすいですし、わかりやすい形ですよね。10年、20年と手にした人の部屋に置かれ続けることもあると思います。
チヨ:そうですね。20年後にオレらがまだバンドをやっていたとして、イチローが禿げていたとして。このブックレットを読み返したら、「こんときは、まだ髪があったからドレッドにしてたんや……」ってなりますもんね。
イチロー:そういうことだね。時空を超えて点と点が線で繋がる。この『HAPPY BIRTH DIE feat. 原田ちあき』という作品が繋いでくれる。もう、めちゃくちゃじゃないですか。
ーそう……いや、え? めちゃくちゃ、ですか?
イチロー:だから、めちゃくちゃなぐらい、とんでもないものが生まれてしまったってわけですよ。
スサシのことが多面的に伝えられる充実し過ぎの内容
ーちなみに、ブックレットの中で好きな企画は?
ユーキ:PDFで確認はしていましたけど、実物のブックレットを見て、やっぱイチローのページはパンチがあると思いましたね。見開きでガツンと使えるのは強いっす。写真をバスキアっぽくペイントしまくってるページもヤバいし、あれが冒頭にきてるのも超クール。どんな本なんやろってドキドキがあるし。
タクマ:オレはもう、全ページが表紙になりうるようなメイン企画だと思ってるんで、なかなか決めにくいかな。
チヨ:そうだね、全ページすごいっていうのは大前提にある。ちあきちゃんのグラフィックだけが掲載されてるところもいいしなぁ。
ユーキ:あと、弔電・祝電のところ。周囲にいる友人・知人にお悔やみ電報みたいなメッセージを送ってもらうっていう。あれもおもろかったですね。実際に死んだら、お悔やみの言葉って聞かれへんじゃないですか。みんなやったらええのに、生前葬ってええんちゃうかって思ったぐらい(笑)。
チヨ:このパートは(メッセージをくれる人によって)テンションや内容に差があるのがいいな~。
ユーキ:完全に見どころの1つやと思う。
ーイチローさん的には、ブックレットのどこが見どころでしょう?
イチロー:僕は…………ゥッ、フグッ……ズッ、ゥグッ、クッ、ヒグッ、ウッフッッ……。
ーいきなり泣くな、イチロー!
イチロー:ゴフゴフッ! ウッフッングッ……。ユーキのぉ…ぉおお……ングフッ! オッ、オオン!
ーはい、ユーキさんの。
イチロー:ブフゥッ! グックフゥ……ツアー日誌……ブッフゥウ!。色々、ツアー中、ほんと……色々あって……その……。
ーユーキさんのページですね。「HAPPY BIRTH DIE TOUR」全ヶ所ライブ後の思いをツアー中に記したリアルな言葉が日記風に掲載されています。ツアーに行った人はもちろんですが、付属するDVDの映像を観ながら読むと、また楽しみ方が広がるページですね、ここは。
チヨ:そう、今作はDVDも付いています。シングルを映像作品と一緒に出したいというのは、割と早い段階からアイディアとしてありましたね。DVDを観ればスサシのライブがどんな光景なのかも伝わりやすいと思いますし、初めての人にもオススメできる内容になるはずだと思って。映像はShibuya O-EASTで開催した「HAPPY BIRTH DIE TOUR」のファイナル公演のダイジェストとツアーのオフショットで約45分ほどで構成しています。
タクマ:これさ、面白い映像になってるよね。
ユーキ:オフなんてタクマがいたずらしてるだけやもんな。ライブ→いたずら→ライブ→いたずら、で。
チヨ:昔、バンドがリリースするライブのオフショット観るの好きだったんで、それができてよかったなって。けっこうはちゃめちゃで、ジャッカス感やおバカな感じも良いバランスで編集されているんで。初見の人も楽しめるんじゃないかと思います。DVDの最後にはイチローファンにはたまらない秘蔵映像も収録されているので。「スサシ、なんか本を出すんだな」って感じで周りに認識されていると思うんですけど、そこに収まりきらないぐらいの広がりがあるし、値段相応、いやそれ以上の満足感や内容になっていると思っています。
ユーキ:総じて考えると、今回のリリースには今のスサシの全部が伝わる要素が含まれていると思う。ブックレットという形で、オレらのことを知らない人にも物から伝えられるというのもなかなかなかったと思うんで。最初にも言いましたけど、なかなか作品としてのヤバさを言葉で伝えるのは難しいんですけど、すでにファンでいてくれている人にも、初めましての人にも体験してほしいっすね。